はじめに
株式投資は予想できるという人と予想できないという人に分かれます。予想できるという人は地道なマーケット、企業分析により今後の予測を立てます。市場平均よりも上がりそうな株式、指数を買う、あるいは売るということで市場平均をアウトパフォームすることを狙っています。一方で予想できないという人はマーケットには情報がすべて瞬時に入るため、価格は常に全ての情報が加味されており、正しいとします。そうすると市場の予想を超えた予想をして売買することは一般の人にはできないということです。
一般的に市場を予測して売買することは一般の人には難しいことであり、そのためインデックスに投資することを勧められます。例えば世界株式を全て入れたETF VT、米国株式を全て入れたETF VTIやS&P500に連動したVOOです。また、暴落も見越して債権を入れるポートフォリオも良いとされます。例えばレイ・ダリオの最強ポートフォリオは株式、債権、コモディティー(金等)へある配分で分配されています。このポートフォリオではある期間(数ヶ月~1年)でリバランスすることで自動的に資産の減少を少なくし、資産増加を早めることができます。リバランスとは値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買うことです。市場は周期的な波動でできているためこのような考え方で資産が守られるのです。この理論は大変素晴らしく、よく考えられているため是非皆さんご参考にしていただきたいです。
しかし、これは市場がどうなるか全くわからない場合の戦略です。どうなるかわからないのであればあるポートフォリオを組んで暴落などのことが起こった後に対処するというやり方が最も適しています。一方で中長期的に株式市場の動きがわかるのであればこのポートフォリオを一定比率にする必要はなくなってきます。
本記事では中長期的な米国株式市場の一般的な動きを解説し、それに合わせた投資方法を説明します。これにより株式インデックスを持ち続ける、債権、株式の一定割合のポートフォリを組んでおくことよりもアウトパフォームすることを目指しています。
マーケットは予想できないのか?
「ウォール街のランダム・ウォーカー」で有名なバートン・マルキールは市場は非常に効率的にできているため、即座に価格に反映されると言います。効率的市場仮説というものです。これは色々な考えを持つ人がいるかと思いますが、期間ごとにどのように価格形成がされているのか考えてみます。
短期(1日~1週間)
需給関係とその場で出たニュースで動きます。動きを予想が難しく、かなりの経験が必要と思います。
中期(3ヶ月~6ヶ月)
トレンド、アノマリー(市場参加者が信じる動き)、3ヶ月に1度の決算、市場のファンダメンタルズで動きます。トレンド、アノマリーを利用すれば中期的な売買もありだと思います。
長期(6ヶ月~2年)
大きな要素としては金融政策です。金融政策が緩和、引き締めのサイクルに従って株式市場が上下します。加えて長期債の金利が重要になります。
比較的予想が容易な期間
株式市場で比較的予想が容易なのは中長期です。なぜならファンダメンタルズや金融政策は急に変更にならないためトレンドが継続する傾向にあるからです。米国株式市場は基本的に右肩上がりになっています。ということは基本的に持ち続ければプラスになります。インデックスを購入してそのままホールドしておけば良いので簡単です。また、以前に比べるとアクティブ投資はインデックス投資に勝てないと言われることが多いです。プロでもアクティブ投資はインデックス投資に勝てないので少々投資をかじったくらいでは長期的に勝ち続けることは難しいでしょう。投資の神様ウォーレン・バフェットも近年ではインデックスに勝てないこともあるようです。
一方で右肩上がりの株式投資でも一時的に大きく下がる局面は数年に一度程度は出てきます。1年単位で見るとマイナスになる年もあります。そういった大きな暴落、年間を通したマイナスを避けることができればパフォーマンスが上がります。細かい相場変動を読むことは難しいですが、大きく下がりそうな局面は相場環境からわかりますのでそういった場面だけポジションを整理するというのが私の考えです。例えば現金ポジションを多く持つ、あるいは債権にしておくということです。これはレイ・ダリオの一定ポートフォリオを続けることに比べるとアクティブに近いです。経済状況によってポートフォリオの「比率」を変えるのです。例えば金融緩和による景気拡大期は株式を多くし、レバレッジもかける。金融緩和が終わったらレバレッジはやめる。金利上昇により景気の縮小を感じだしたら金利上昇により値下がりした長期債の比率を上げておく。株式市場が下がったら金融緩和がされますのでまた株を増やすという流れです。
具体的なサイクル投資
ここからは具体的な分析について考えてみます。まずは金利と株価の関係です。

ここからの話は率直に申し上げて株式市場での最も大事な、そして回避できれば間違いなく大きな資産を築ける話です。知っていると知っていないでは株式市場への向かい方が全く異なってきます。
チャートの上段はS&P500指数。下段の赤:長期金利(10年国債)、緑:政策金利=短期金利です。
この20年でほぼ右肩上がりなのですが、2001年のITバブル崩壊と2007年リーマンショック、この2箇所では大きく株価が下げその後数年間は株価が戻りません。これらショックの直前に全額投資を始めた人はとんでもないことになったことでしょう。そして私もその一人です。投資に目覚めた2007年、国内株式を全力で買っていましたがリーマンショックにあい、何もわからないまますごい暴落となり、見ていられず全額売却。大きな損失を出した後、立ち直れず株式を見ることはなくなりました。上がっていてもまた暴落が来るんでしょと疑心暗鬼になり、投資に向かう気にはなれませんでした。しかし、相場サイクルからすると素人の私は取るべき行動の完全な逆を行っていたのです。
チャートに戻ると、ショックを回避するにはショックの直前で何が起こるのかを見つける必要があります。ショックの直前の金利に注目します。結論から申し上げると長期金利を政策金利が追い抜いたときはショックが近いということになります。その後数ヶ月に渡って上がるかもしれませんが、そのうち暴落が来ます。これを逆イールドと呼びます。長短金利差の逆転はこの20年でも3回しか起きていません。7年に1度の出来事なのです。これが分かれば資産が大幅に減少することを避けることができ、後はインデックスをホールドするだけで良いのです。
すごくないでしょうか?
ちなみに直近はコロナショック直前で長短金利差の逆転が起きていますが、コロナショックとは全く無関係です。ただし、長短金利差逆転により株価が下がりやすい地合いにはあったと思いますので少なくとも調整は起きていたと考えられます。
このサインを見たときには現金ポジションや債権のポジションを大幅に増やすと良いです。現金であれば変動しませんし、債権であれば景気後退局面に入ったあとで金利が下がり債券価格上昇が見込めます。株式インデックスをショートするというのも手としてはありますが、コロナショックのように株価がすぐに戻る可能性もあるため注意が必要です。金融不安、ショックであれば立ち直りに長い時間がかかりますので株式インデックスのショートは有効です。ショックの中身をよく吟味する必要がありますので経済に詳しくなるまではとりあえず現金または債権(国債)へのポジション変更で良いです。
逆イールドは景気後退のサイン
投資方法の結論はわかったのですが、なぜ逆イールドが発生すると株価が下がるのかが疑問です。
金利は長期になるほどその期間のプレミアムを加味することになるため通常は短期が低く、長期は高いということになります。これが順イールドです。
景気悪化懸念が出てくると長期金利の大幅な低下が見込まれてきます。景気悪化による利下げです。そうすると長期国債の利回りが下がってきます。債権トレーダーは賢く現状を冷静に分析しそれを価格に織り込んでいくと言われます。一方で株式市場は期待で買われていきます。つまり債権トレーダーは景気の先行きに非常に敏感に反応しているということです。一方で政策金利を上げている局面では現段階の景気は加熱していると考えられています。政策金利は上がっていきます。FEDは現状の指標から政策金利を上げていき、債権トレーダーは数ヶ月~1年程度の先を見越して国債金利が下がってくる。そしてその交点に来たときがサインとなります。
景気後退となり暴落となった後は金融緩和が始まります。金利が下がり、場合によってはFEDによる資産買い入れ量的緩和になります。そうなったらまた株式インデックスを買えば良いのです。
まとめ
今回は株式の暴落のサインとなる逆イールドについて説明をしました。逆イールドが発生すると近い将来(数ヶ月~1年)株式の暴落になるため現金や債権のポジションを高めることが資産を守ることになります。株式インデックスを購入した後、何も触らず老後を迎えるのも良いのですが、このような暴落サインを見つけてポジション調整をすることにより更に資産を増加させることができるようになります。
皆さん、一緒にFIREを目指しましょう!!
そして、投資は自己責任、自己利益で。
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